プロジェクト参加メンバー

石川 登 (研究代表者)

人類学 

京都大学 東南アジア研究所

 

<プロフィール>
  ニューヨーク市立大学大学院 (the Graduate Center, CUNY)より人類学のPh.D.を受く。
京都大学東南アジア研究センター助手、助教授を経て、現在は東南アジア研究所教授
 専門は人類学、東南アジア地域研究。フィールドワークによって知ることのできる人々の生活とこれをとりまくマクロな社会動態の結びつきに注意をはらうこと、社会事象のより良い理解と説明のために有効な歴史と空間のスケールを意識しながら調査を行うこと、この二点を基本的な研究姿勢としている。
 主にマレーシア、サラワク州、インドネシア、西カリマンタン州、そして日本などで調査を行なってきた。
最近の著作としては以下のようなものがある。
石川 登. 2010 「歴史の中のバイオマス社会 -熱帯流域社会の弾性と位相転移-
杉原薫,川井秀一,河野泰之, 田辺明生 編『地球圏・生命圏・人間圏 ―人類にとって生存基盤とは何か― 』京都大学学術出版会.
Ishikawa, N. 2010. Between Frontiers: Nation and Identity in a SoutheastAsian Borderland. Singapore/Copenhagen/Athens: National University of Singapore Press/NIAS Press/Ohio University Press.
Ishikawa, N, Wil de Jong and Denyse Snelder eds. 2010. Transborder Governance of Forests, Rivers and Seas. London: Earthscan.
石川 登. 2008. 『境界の社会史:国家が所有を宣言するとき』.京都:京都大学学術出版会(第三回樫山純三賞受賞)
柳澤雅之,河野泰之,甲山治,神崎護 編 『地球圏・生命圏の潜在力 -熱帯地域社会の生存基盤-』京都大学学術出版会.  第11章「熱帯バイオマス社会の複雑系-自然の時間、人の時間-」 石川登・祖田亮次・鮫島弘光


祖田 亮次 (研究分担者)

地理学・人口移動論・災害文化論

大阪市立大学 大学院文学研究科
 

<プロフィール>
   2000年 京都大学文学研究科指導認定退学 → 2000年 広島大学総合地誌研究資料センター助手 → 2002年 北海道大学文学研究科助教授 → 2009年 大阪市立大学文学研究科・准教授。
 大学院修士課程に進学した1995年以来、サラワクに通っています。これまでは、先住民の国内・国際・越境移動や、それに関わる都市-農村関係、民族と政治の問題などを中心に調査をしてきました。 数年前にひょんなことから洪水の調査を始めたことをきっかけに、最近では河川文化論や流域社会論、あるいは災害文化論などの構築を夢想しています。
 今後は、河川をめぐる人間-環境関係という観点から、日本、東南アジア、そしてサラワクを見てみたいと思っています。
 本プロジェクトでは、関心を共有しうる異なる分野の方々が数多く参加しているので、皆さんとのディスカッションを楽しみにしています。


河野 泰之 (研究分担者)

東南アジア地域研究・自然資源管理・生業論

京都大学 東南アジア研究所

 

<プロフィール>
 大阪で生まれ、東京で学び、就職後は京都と東南アジアを往還。  土地利用、水資源管理、農業技術、森林保全、農村発展、生態史等について、タイ、ラオス、ベトナムを中心に、中国・雲南省、カンボジア、ミャンマー、インドネシアにおいても少し、調査研究してきました。
 近年は、利用する資源の特性が大きく異なる沿岸域にも視野を広げ、農山村の社会発展をより包括的に分析するために生業転換という視点を導入し、持続型生存基盤を求めてバイオマス社会を構想しようとしています。


杉原 薫 (研究分担者)

グローバル ヒストリー・アジア経済史

政策研究大学院大学


<プロフィール>
 専門は19世紀以降のアジア経済史、とくに貿易史だが、近年は国際的なプロジェクトを組んでグローバル・ヒストリー研究に従事してきた。そこでの主たる関心は、西洋に比較して、アジアに特徴的だと考えられる工業化や経済発展の径路の歴史的解明にあった。
 東アジアでは資本集約的というよりは労働集約的な工業化が一般的で、土地や原料・エネルギー資源の制約を克服すべく、資源節約的な経済発展が試みられた。
 現在、グローバルCOE「生存基盤の持続型発展を目指す地域研究拠点」のまとめの段階にあり、アジア、アフリカの熱帯地域の発展径路の類型化を目指している。水やエネルギー資源のあり方が多様で、不確実性への対応が重要な熱帯では、温帯とは異なる径路が追求された。
 本プロジェクトでは、高度バイオマス社会として発展した東南アジアの一部が工業化とグローバリゼーションのなかでどのような変容を遂げてきたか、それはいかなる世界史的意味を持つのかを検討したい。


水野 広祐(研究分担者)

経済発展論 農業経済学 労働経済学 インドネシア地域研究

京都大学 東南アジア研究所

 

<プロフィール>
 京都大学経済学部卒(1978)、京都大学農学博士(1994)
 現在の研究関心:
 1)民主化・地方分権化下のインドネシアにおける住民の諸組織と制度変化および発展の諸関係、ならびにその東南アジア・東アジアとの比較研究、2)東南アジア経済発展における小営業と在来的発展、3)生存基盤持続型発展や多層的地域発展によるポスト輸出志向工業化の東アジア経済発展モデル形成


徳地 直子(研究分担者)

森林生態保全学

京都大学 フィールド科学教育研究センター

<プロフィール>
 森林での物質の動きを追っています。物質が移動すること、そして植物などに使われることを通じて、森林は成長し、生態系サービスと呼ばれるさまざまな機能をわれわれに提供してくれます。
 マレーシアでの土地利用改変がこれらの物質の動きをどう変え、森林はどう変わっていくのか?生態系サービスにはどんな影響があるのか?そして、生態系サービスを受ける人々は、変化をどう感じているのか?
 このプロジェクトを通じて、いろんなことを知りたいです。


内堀 基光(研究分担者)

文化人類学

放送大学 教養学部

 

<プロフィール>
 このプロジェクトはサラワク中央部という、民族間の関係や、民族生成の論理に関して、じつに面白い事例を提供してくれるだろうという予感があります。
  しばらく前にはじめたカクス支流プニャライ川沿いのブキタン(ブグタン)集落の調査を、これを機会にきちんと行うつもりでいますが、年齢のせいかなかなか集中できません。このプロジェクトでは、若い人に大いに活躍していただきたいと願っています。
  現在、ほかにマダガスカル中央部の森林縁辺部に住む人々の調査も再開していますので、しばらくのあいだは二足のわらじを履くことになりそうです。


小泉 都

生態人類学 

京都大学 農学研究科

<プロフィール>
 これまで、ボルネオ島で先住民の人々の森林について知識を研究してきました。
 人々は森林について豊かな知識を持ち、林産物がその暮らしを支えています。ところが、森林の劣化や消失がボルネオでは大きな問題となっています。
 2011年度は、今までの少し専門を離れて、森林の持続的利用について研究します。商業伐採地の植生の状態を調査したいと思っています。また、伐採地のスタッフなど現地の人々を対象とした、植物標本の作製や同定のトレーニングを実施したいと考えています。


鮫島 弘光

生態学

京都大学 東南アジア研究所

 

<プロフィール>
 これまでは同じボルネオのサバ州で持続的森林管理のための哺乳類多様性調査手法の開発を研究してきました。
 石川基盤Sでは森林の哺乳類、特に主要な狩猟対象獣であるヒゲイノシシの生態と、人々の生業活動をつないで理解することができるような研究ができ ればと考えています。
 またプロジェクトマネジメントスタッフの一員として、革新的な学問的成果を生み出すプロジェクトになりうるよう努力する所存です。
Samejima H. and Semiadi G. 2012. First record of Hose’s Civet Diplogale hosei from Indonesia, and records of other small carnivores in the Schwaner Mountains, Central Kalimantan. Small Carnivore Conservation. 46: 1-7
Langner, A., Samejima, H., Ong, R. C., Titin, J., and Kitayama, K. 2012. Integration of carbon conservation into sustainable forest management using high resolution satellite imagery: a case study in Sabah, Malaysian Borneo. International Journal of Applied Earth Observation and Geoinformation. 14: 305-312
Samejima, H., Ong, R., Lagan, P., and Kitayama, K. 2012 Camera-trapping rates of mammals and birds in a Bornean tropical rainforest under sustainable forest management. Forest Ecology and Management. 270: 248-256
Samejima, H. and Ong, R. 2012. “Distribution of Mammals in Deramakot & Tangkulap Forest Reserves, Sabah, Malaysia”. Kyoto Working Papers on Area Studies No.129
Fujita, S. M., Irham, M., Fitriana, Y. S., Samejima, H., Wijamukti, S., Haryadi, D. S., and Muhammad, A. 2012 “Mammals and Birds in the Bukit Batu area of Giam Siak Kecil – Bukit Batu Biosphere Reserve, Riau, Indonesia” Kyoto Working Papers on Area Studies No. 128


藤田 素子

鳥類生態学

京都大学 東南アジア研究所

 

<プロフィール>
 人間の影響の強い環境下では,土地利用の違いが,多くの生物の在・不在に関わってきます。たとえば,森林や水田の多い田園環境と、住宅地の多い都市環境では,生息する種が異なります。
 私はこれまで、このような人為的な環境の違いで鳥類相がどう変わるのか、そしてその結果として、どのような生態系機能の違いが出てくるのかを、日本・マレーシア・インドネシアの調査地で、栄養塩(窒素・リン)の運搬に着目して研究してきました。
 このプロジェクトでは、地域の重要な輸出産物でありつづけるアナツバメ類の巣に焦点をあてて、土地利用の違いと持続可能性について検証し、生態系内での役割としての物質の運搬についても研究したいと思っています。


甲山 治

水文学

京都大学 東南アジア研究所

 

<プロフィール>
 専門は水文学、特に大気陸面相互作用。
 2005年京都大学工学研究科博士課程修 了、山梨大学研究員、京都大学防災研究所研究員、東南アジア研究所 特定助教を経て、2009年より現職。
 東南アジア各地に広範囲に広がる泥炭湿地を研究対象地として、「水・熱循環」と「持続性」をキーワードに、大規模植林が周辺環境に与える影響評価 手法の構築を目指している。
 現在は西カリマンタンにおいて大規模人工造林の持続性を評価するために、水・熱循環およびCO2動態のモニタリングおよびモデル化を行っている。
 サラワクでは、水文動態モデルの構築と、土地利用変化が河川の流況と水質に及ぼす影響評価手法の開発を目指している。


福島 慶太郎

森林生態系生態学

首都大学東京 都市環境学部

 

<プロフィール>
 森林生態系の物質循環機構の解明を背景に、植物・土壌・渓流水の採取・化学分析を 10年近く行っています。
 現在所属のフィールド研では、森林だけでなく、もっと下流 の河川・ダム湖・沿岸河口域までを対象にして、流域の土地利用と水質の関係を明ら かにする研究を行っています。
 縁あって,国内にとどまらずマレーシアまでフィールドを広げることができました。日本では見られないスケールの土地利用形態が見られ、そこには抜き差しならぬ多様で生々しい問題が含まれているようです。
 流域内に暮らす人々の生活観・社会観を意識しながら、流域の河川水質の分布と形成機構を明 らかにできればと思っています。
 また、これまでまったく接点のなかった研究分野の方々と一緒に研究できる機会ですので、お酒は強くないですが楽しい時間が過ごせたらと思います。よろしくお願いいたします。


津上誠津上 誠

文化人類学

東北学院大学 教養学部

 


奥野 克巳

文化人類学

桜美林大学 リベラルアーツ学群

 

<プロフィール>
 1994年~1995年にかけて、インドネシア・西カリマンタン州の人口2000人弱の焼畑稲作民カリスの民族誌調査を行う。2006年以降、マレーシア・サラワク州のブラガ川上流域の(元)狩猟民プナンの現地調査を継続的に実施している。
 主要著作:『「精霊の仕業」と「人の仕業」:ボルネオ島カリスの災い解釈と対処法』『帝国医療と人類学』(単著) 『文化人類学のレッスン』『医療人類学のレッスン』『セックスの人類学』(共編著)


市川昌広市川 昌広

東南アジア地域研究

高知大学 農学部

 

<プロフィール>
 2002年に京都大学人間・環境学研究科の博士課程を修了し、その後、総合地球環境学研究所に5年余り在籍し、現在は高知大学農学部にて勤務。
 大学院よりサラワクのイバンの土地利用、森林利用、暮らしについて調査してきた。高知に移り、山村の過疎・高齢化問題を考えるようになった。
 サラワクでも山村から都会への人口流出により、人口減少が進みつつあり、村落社会や資源利用に影響が出てくるのではなかろうかと考えている。
業績:市川昌広・生方史数・内藤大輔編著.2010.『熱帯アジアの人々と森林管理制度』人文書院
秋道智彌・市川昌広編著.2008.『東南アジアの森でなにがおきているか』人文書院
Ichikawa, M. 2011. “Factors behind differences in depopulation between rural villages in Sarawak, Malaysia.” Borneo Research Bulletin 42. in press


生方 史数

天然資源経済学

岡山大学 大学院 環境生命科学研究科

 

<プロフィール>
 これまで、タイとラオスを中心に、天然資源管理制度の導入がもたらす地域社会への影響や、資源利用型産業の発展が地域社会へ及ぼす影響について研究を行ってきました。
 本プロジェクトでは、その逆の視点、すなわち地域社会との関わりの中で、オイルパームに代表されるような拡大著しい資源利用型産業がどのような発展プロセスを辿ってきたのか、そして今後どのようなプロセスを辿るべきなのか、という課題を考察することができたらと思っています。
 サラワクでの調査研究ははじめてですが、他のメンバーの方々に教えを乞いながら、一歩一歩進めていきたいと思っています。


市川 哲

文化人類学

立教大学 観光学部

 

<プロフィール>
 これまでマレーシアやパプアニューギニア、オーストラリアで現地調査を行ってきました。近年のパプアニューギニアにはサラワク州出身の華人が存在するため、2004年から定期的にサラワクを訪問し、送出地域のことを調査しています。
 現在は主にマレーシアにおける華人と先住民の関係や国家を越えた移住や商品のやり取りといったトランスナショナルな活動に注目した調査・研究を行っています。マレーシア華人を対象とした研究は数多くありますが、サラワク州における研究はそれほど多くありません。
 特定の水系を取り上げ、そこにおける複数の民族集団や地域集団の相互関係に注目するというこの研究プロジェクトに参加することにより、新たな華人研究の方向性を示せるのではないかと期待しております。


定道 有頂

ライフサイクル・アセスメント

日本エヌ・ユー・エス株式会社(JANUS)

 

<プロフィール>
 2006年から2010年までタイのチェンマイ大学で講師として、タイ国内でのエネルギー・プランテーション(作物を栽培し、バイオ燃料や電力を生産)に伴うライフサイクル温室効果ガス排出量の評価を行ってきました。
 石油燃料に比べてバイオ燃料は確かに計算上では温室効果ガスの排出量全体を少なくできるケースがあるものの、限りある土地を利用して、燃料を生産することが本当に良いのか?食糧を生産したほうが良いのではないか?地域の社会に本当に役に立つのか?…など各種の疑問に超えられるようなエネルギー・社会環境の総合評価から、人類にとって本当に役に立つバイオマス生産活動の理想的な形を探したいと考えています。
 様々な分野のエキスパートが集まる本プロジェクトにおいては、現地で実際にどのような問題があり、どのように解決策すべきなのか、多様な視点に基づいた解決法を知り、何かヒントを見つけることができれば、と考えています。


Nathan Badenoch

東南アジア地域研究

京都大学 白眉センター/東南アジア研究所

 

<プロフィール>
 I have been working in the uplands of mainland Southeast Asia since 1999, covering a broad range of resource governance issues from policy and community perspectives. This background, combined with my life-long fascination with languages has led me to my current research looking at biocultural diversity in Laos.
 In my capacity as a Hakubi research fellow, I am exploring the dynamics of multilingualism within a rapidly changing socio-economic landscape along the Lao-China border. In the Biomass Society project, I am broadening my interests to look at “the Borneo watershed” as a social space that is formed by complex interactions among diverse ethnic groups.
 Central to this line of investigation is how multilingualism along the rivers has contributed to social relations, and how these dynamics are changing as local society shifts its orientation away from river networks towards road networks. Working from a basic knowledge of Bahasa Melayu I have started studying Iban and Kayan.
 I’m also reviving my Hokkien and working on Hakka in preparation for fieldwork.


田中 耕司

東南アジア研究

京都大学 研究国際部学術研究支援室

 

<プロフィール>
 2010年3月末をもって京都大学を定年により退職しましたが、まだ京都大学にいて「白眉プロジェクト」という若手研究者の支援プログラムをお世話しています。
 残念ながら、まだサラワクへ出かけたことはありません。ただ、インドネシアのカリマンタン諸州を何度か訪ねていますので、だいたいどんなところか想像がつきます。
 この科研プロジェクトの申請時から石川さんから構想を聞いており、その縁があって協力者となっています。とはいえ、現地経験ゼロですから、協力というよりも、皆さんからいろいろと教えてもらうのを楽しみに研究会等に参加しています。
 東南アジア各地の農林業や生物資源管理に関心があります。また、河川を通じたエスニックネットワーク、あるいは人びとの移動や物流、近年ひどく拡大しているアブラヤシプランテーションなど、カリマンタンとの比較で興味深い課題がたくさんあります。
 というわけで、皆さんのさまざまな土産話を聞くのを楽しみにしています。


佐久間 香子

文化人類学

京都大学 大学院 アジア・アフリカ地域研究 研究科

 

<プロフィール>
 数世紀にわたって続けられてきたボルネオ先住民社会における林産物交易は、生業経済や民族間関係の基盤に位置づけられる重要な活動です。熱帯雨林のアブラヤシ・プランテーションへの転化、自然保護区の設置など、森林を取り巻く状況はめまぐるしく変化していく昨今の状況下において、私の関心は、林産物交易によって成り立っていた近隣民族間の社会関係の変化にあります。
 私の研究対象は商品作物の「川上」に焦点をあてていますが、本プロジェクトでは「川上から川下まで」の流域社会全体が対象です。個人ではできないスケールですので、とてもワクワクしています。


小林 篤史

歴史学

政策研究大学院大学

<プロフィール>
 長野県千曲市生まれ。筑波大学第一学群人文学類考古学・民俗学専攻に進学し、学部生時代は城跡や人骨の発掘をしていました。それがなぜか、大学院では地域研究科に所属し、19世紀の東南アジア貿易史研究を行っています。
 東南アジアに興味を持ったきっかけは、シンガポールでの滞在で、小さな国家に多様な背景を持つ人々が共存している現状を歴史的に理解したいと思った次第です。サラワクにはシンガポールの域内交易という視点からアプローチしていきたいと考えています。
 19世紀にサラワクで採取された森林産物などが、どういったネットワークを介してシンガポールに至り、どこで消費されていたのかを貿易統計など用いて解明していきたいと考えています。


太田 淳

前近代・近代インドネシアおよびマレー世界の歴史

広島大学 大学院文学研究科 総合人間学講座

<プロフィール>
 18、19世紀のマレー・インドネシア諸島の歴史をオランダ語、英語、マレー語、ジャワ語、中国語などの資料を用いて研究している。
 今興味を持っているのは、リアウ、リンガ、西カリマンタン海岸部で、頻繁に移住しながら貿易や海産物の収集などに従事した「海民」の歴史的役割である。彼らはマレー、オラン・ラウト、ブギス、イラヌン等様々な背景を持ち、オランダ語資料ではstrandbewonersなどと呼ばれ、長く定住する人々とは区別されていた。
 彼らは貿易や戦争で重要な役割を果たし、それゆえに地域の政治的秩序や貿易ネットワークの成立にも貢献した。こうした人々の活動を通じて、国境を越えた地域の歴史を再構築したいと考えている。さらに19世紀マレー・インドネシア諸島の非植民地産品(植民地資本が大規模に促進した農産物、鉱産物と区別される、現地民や華人の生産する輸出産品)の生産と貿易にも関心がある。このような産品に注目することで、植民地産品にのみ特化した植民地期経済史を再検討したい。


内藤 大輔

東南アジア地域研究、ポリティカル・エコロジー

国際林業研究センター(CIFOR)

<プロフィール>
 これまで、マレーシア、サバ州において森林認証制度を事例として、市場メカニズムによる自然資源の導入による地域住民への影響について、研究してきました。
 本プロジェクトでは、森林認証制度やオイルパーム認証などの比較研究を進めていきたいと考えています。


Jason Hon Shung Sun

動物生態学

世界自然保護基金 マレーシア

 

<プロフィール>
 I grew up in the city of Kuching, in the Malaysian state of Sarawak. In 1999, I obtained my Bachelors Degree in Applied Science from University of Science, Penang, majoring in freshwater ecology. I then worked for 2 years as a Zoologist with the Sarawak Biodiversity Centre.
 In 2002, I obtained my Masters in Ecology from Aberdeen University, UK. From end of 2003 to 2009, I worked with the Wildlife Conservation Society – Malaysia Program and conducted studies in various fields, notably surveys of primates, birds and bats. Towards the later half of my appointment, I was greatly involved in the research on wildlife in logging concession areas and forestry policies.
 In 2009, I furthered my studies in Kyoto University under the sponsorship of Japanese Government (Monbukagakusho) Scholarship. Currently, I am attached to the Graduate School of Global Environmental Studies as a doctoral degree student.
 My research topic is the utilization of key resources by wildlife (focusing on natural salt licks) in production forests environment in Sarawak. The study sites are a logging concession and a tree plantation area in Bintulu.
 In Sarawak, other forms of forested environments also have crucial roles in the conservation of wildlife. In view of the large expanse of areas set aside for logging and forest plantations in Sarawak, efforts must be intensified to promote the conservation of wildlife in these areas.


加藤 裕美

文化人類学・生態人類学・民族生物学

京都大学 白眉センター/東南アジア研究所

 

<プロフィール>
 これまで、サラワク州のブラガにおいて、森の中を遊動して暮らし、森林産物の交易を生計に暮らしてきた狩猟採集民系の人々を対象に研究してきました。特に人々の野生植物や動物の利用、またそれをもとにした経済活動に興味を持ち調べてきました。
 従来狩猟採集民であった人々は、伐採により周りの森林が劣化したり、市場経済化によって、経済活動の選択肢が増えたとしても、森での狩猟採集を何らかの形で継続する傾向が見られました。
 このプロジェクトでは、自然林、択伐林、アブラヤシプランテーション、アカシアプランテーションなどの異なる自然環境下に暮らす複数の民族を対象に、経済活動や野生動植物利用を比較検討していきたいと考えています。
 様々なバックグラウンドを持った皆さんと、同じ状況を対象に調査・研究できるのが楽しみです。


鹿野 雄一

河川生態学・断崖生態学・エコインフォマティクス

九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター

 

<プロフィール>
 おもに淡水魚の生態研究を国内外で行っています。あこがれの地サラワクで多様な魚たちに出会えることを楽しみにしています。
 生態学的な視点のみならず多様な価値観からサラワクの環境と生物多様性を捉えたいと思っています。


竹内 やよい

生態学

国立環境研究所

<プロフィール>
 これまで東南アジア熱帯林の樹木群集の多様性、樹木集団の繁殖生態などの研究を行ってきました。
 このプロジェクトでは、サラワクの焼畑農業の土地利用に注目し、その生物学的な意義、特に生物多様性保全機能について明らかにします。また、プランテーション開発が進む昨今、焼畑農業地の変遷や人々の価値観の変化などを、社会学の研究者と協同して調査を行っていきたいと考えています。


目代 邦康

地形学・自然地理学・資源保全学

公益財団法人 自然保護助成基金

 

<プロフィール>
 大学院生時代には、堆積岩山地の大規模崩壊地の地質構造と地形の関係について研究。大学院修了後、筑波大学陸域環境研究センター(現アイソトープ環境動態研究センター)で、河川地形や実験地形学の研究をすすめる。その後、産業技術総合研究所地質標本館では、サイエンスコミュニケーターとして科学を伝える仕事に従事。
 現在、自然保護助成基金主任研究員。専門の地形の研究をしつつ、そのことの意味を模索中。